「パパ、おかえりなさーい」

と、可愛らしい声で出迎えてくれた、愛娘のゆりに、それまでの憂鬱な気持ちも吹き飛んでニッコリと笑顔になる。

「はい、ゆりのお誕生日のケーキ。ママと作ったんだよ~。これパパの分」

このところずいぶんとしっかりしてきたゆりが、ななめにゆがんで切られたケーキを冷蔵庫から運んできた。

 

 

今日こそは家族と一緒に食事をすると決め、急いで仕事を済ませ帰ろうとしていたところ。

急なクレームの電話に対応せざるを得なくなった。

実際の対応は明日になりますからと、取引先にそう説明するのだが、長々と文句を聞かされ続け、無為の時間だけが過ぎていき、帰り着くはずだった8時はあっさり過ぎ去ってしまい。徒労感を抱えてやっと家路についたのは、9時近くだった。

 

2時間の遅刻をした。

 

でも、ゆりは文句一つ言わない。いつも通りのゆりだった。さすがにちょっと眠そうではあったけれど。

 

ケーキの出来を自慢しているゆりの横で、ケーキにローソクを立て2度めのハッピーバースディを歌う。

ケーキを作るのがいかに大変だったかを一生懸命にわたしに語って聞かせているゆりの横でケーキを食べ終わった。

 

今日は、どうしてもゆりとお風呂に入らなくちゃな。

「さきに、ゆりとお風呂に入ろう」

 

ー この日のために買っておいたんだから ー

 

大喜びしているゆりの顔。湯気の中へとろけてしまいそうな笑顔を見て、

「その可愛いさ」とこの娘を与えられたしあわせを噛みしめている。

 

二人の間には、湯舟にカエルのバスライトが、とっても気持ちよさそうに浮かんでいる。